外国人というレッテル
今ならあの時彼が悩んでいたことが分かる気がする。
外国人と結婚するということ、しかも相手は自分の母国語を全く話せない。自分の国に住んだこともなく、住めるかも分からない。
家に帰ったら、好きだけど外国人の相手。自分は必然的に外国語を使わなくてはいけない。
それは結構なストレスだと思う。
そんな時に、昔すごく好きだった女性が近づいてきた。
その女性は自分と同じ国籍で同じ母国語。
その女の嫌な面を知っているものの、顔はタイプ。
なによりも同じ国籍で同じ言葉を話せる楽さ。
すごくすごく思い悩んで疲れていた時に、その女が現れて、一緒に住まないかと提案された。
それは昔に自分がすごくしたかったこと。
レールを引かれて、それは彼にとって楽だった。
だからそっちに流されていった。
でも、私のことを好きな気持ちがあったのは本当。だから私を見ると切ない顔をするし、苦しい思いもある。
そんなところだろうか。
当時はすごく納得がいかなくて、とてもとても辛かった。苦しんだ。
でも、今自分が彼の母国、私にとっては外国に住んでいて、分かることもある。
外国に住むのはとても大変だ。しかも私は今は仕事をしてないが、仕事をするようになったら尚更だ。
文化も違うし、国の発達度も違う。日本には男尊女卑とか女性に対して大きな負担があったりとか厳しすぎるとか色々と問題もあるけれど、そうは言っても先進国。
街の綺麗さや、秩序だった一面、経済や政治が安定しているところ、良いところがたくさんあるんだ。
日本にいると気づかないけど日本って大国なんだよ。
うん、それと比べると、外国人という立場で外国に住むのはなかなか辛いし大変だ。
彼が考えたことはそういうことなんじゃないだろうか。
そう思えば、誰が彼を責められるだろうか…私はずっとどこか心の中で彼を責めていた。
でも、当時彼が決めたこと、それはどうしようもないことだったんだ。
今ならそう思えるよ。