好きになった人がゲイだった
好きになった人がゲイだった。
大失恋の後、好きになった人。
私のことを信じてくれて、私のためにみんなに説明し、行動してくれた人。
他の人は誰も私を信じてくれなかった中、彼1人だけが私を信じてくれた。
私は信じてもらえたのが嬉しくて、ますます彼に夢中になった。
これまでの人生で辛いことも沢山あったけど、全ては彼に会うためにあったんだ。人生で無駄なことなんて何一つないんだって思えた。
私は彼に会うためだけにオシャレに磨きをかけ、毎朝早く学校へ行き勉強し、彼ともっと話がしたいために、共通の言葉である英語の勉強に力を入れた。
特にここ一ヶ月くらいだろうか。私は彼のためだけに生活してきたと言っても過言ではないくらいだった。
そう、私は恋愛にのめり込みやすいのだ。
好きな人ができると全てが薔薇色になる。幸せいっぱいになる。
毎日、息をしているだけで幸せを感じた。
彼と一瞬すれ違うだけでも嬉しくて、そのために時間を計算して行動したりした。
彼とはこの一ヶ月特に特に接近してきて、淡い期待がだんだん濃くなってきた。彼ともっと語り合いたい。彼を知りたい。私のことも知って欲しい。気持ちはどんどん加速した。
そんな時、彼からちょっと会えないか?と呼び出された。
呼び出されたのは私だけではなかった。もう1人ゲイの友達も呼び出された。
そこで、唐突に
I’m gay.
と告げられた。本当に唐突だった。私にとっては。だって、歩きながらだったし、なんの前置きもなかったし。
最初は何のことを言ってるのか理解できなかった。
でもすぐに頭は追いついた。
彼曰く、彼がゲイであることに私が気づかなかったのは私がストレートの女の子だから、と。
そして続けざまに言った。
今付き合っている人がいる、と。
それは私たちの共通の友人だった。彼は性格もよく私も大好きな友人だった。一ヶ月前から付き合っている、と。それはなんと私の誕生日だった。
彼は現実を突きつけ、私を家まで送り届けると、彼氏のもとへ帰って行った。
ぐうの音も出なかった。しばらく事態が飲み込めなくて、普段は飲まないお酒を煽った。
酔った頭でぼんやりと状況を理解した。理解しようと必死だった。
彼はゲイ。私のことを好きになることは一生なく、私に欲情することも絶対ない。私にはキスさえもできない。
そして彼は今彼氏がいる。彼は今彼氏とセックスをしている。
私の好きな人が私以外の人と、それも私の友人とセックスをしている。
ああ、この状況はちょうど8ヶ月前もあったな。
私の人生ってなんなんだ。私の好きな人はいつも別の人、それも私の友人とキスをして、セックスをして、幸せになるんだ。
胸が潰されそうな思い。でも2回目だからか?幸いなことに8ヶ月前ほどの打撃はなかった。
そのあと、カミングアウトした彼と彼氏と共通の友人と食事会をした。正直、食欲は皆無で何も口につかなかった。ひたすらビールだけを煽った。でもこの動揺を周りの友人に気づかれないように。
翌日、翌々日、何も手につかなかった。
したことといえば、インターネットでゲイについて必死に調べた。
もしかしたら彼はバイなのかもしれない。そんなことはないのに、ゲイからバイへなる可能性を調べたり。一縷の望みを探した。馬鹿みたいに必死だった。
でも、事実として、彼はゲイなのだ。そして今愛する彼氏がいる。彼が彼氏を愛していることは、2人を見ていれば容易に分かった。むしろどうしてこれまで気づかなかったのか。サインは沢山あったのに。
そして彼はゲイ以外の人にカミングアウトしたのは初めてだと言った。それはつまり私が信頼されていることではないのか。彼は私の人間性を認めてくれたということではないのか。
彼とキスしたりすることは一生ないけれど、固い友情が生まれたということではないのか。
それはそれで凄いことではないのか。
彼はカミングアウトするまで悩んだだろう。特に彼の国でのゲイの肩身はとても狭い。彼が非常に優秀なばかりに両親や友人たちからの期待やプレッシャーも重い。
そんな中1人抱えてきたであろうゲイという事実。
そして今一時かもしれないが彼は愛する人と安息できる場所がある。
それは彼にとって幸せなことではないのか。
彼が幸せで安らぎを感じられること、
それは私の彼への願いでもあると気づいた。
そう気づいたら、私にできることは一つ。なるべくこれまでと同じように彼と接することだ。
好きな人が彼氏といちゃついてるのを見るのは非常に辛いものがあるけれど、彼をそっと応援しよう。私の彼への想いはそっと手放そう。
私はまた新しい人を見つけよう。
私なら大丈夫。
きっとまた恋をする。