自分に好意がある男
今日、私に好意があった男性が故郷へ帰るとのことで、街を去っていった。
彼の住んでいる所は外国ですごく遠い。また会うかもしれないし、もう二度と会わないかもしれない。
彼は最後までニコニコ笑顔を浮かべていた。途中、彼の好意に気づいた私が彼に冷たくしてしまったのにもかかわらず。彼は私と一定の距離を取るようにしながらも、嬉しげに私に話していた。
思わず良心が痛んだ。そんな資格もないのかもしれないけど、でも、なんか嬉しいけれど悲しかった。自分でもよく分からない感情だ。
彼の何がダメだったんだろう。彼は彫刻といっていいほど整った顔立ちで、身長も高く、性格は穏やかで、レディーファースト、話していても話は尽きない。時々退屈な時もあったけど。
語学にも堪能で、いい声をもっていた。
でも、心が震えなかったんだよな。いい人だけれど、この人に、思わず触りたいとか思わなかったんだよな。
私が好きだった人は全然ハンサムではないし、身長だって低いし、髪だって薄くておでこが広くて。でも、彼は頭が良くて、話していると面白くて、目と目を見つめあってると、胸の奥が掴まれるような、熱くなるような、なんだか泣きたくなるような、そんな人だった。
兎にも角にも、今日去っていった彼を見習おうと思った。未練さを一切出さず、ニコニコとこちらもつられてしまうほどの笑顔で、さらりとした感じ。思わず未練を覚えてしまうような、また会いたくなるような、そんな感じ。
私もそんな風にこの場所を去っていこう。
そう思った。